都道府県名はどこから来ているのか? -都道府県名の由来-
日本には47の都道府県があります。これらの中には県庁所在地と同じ県名、異なる県名が入り交じっています。
これらの都道府県名は何に由来しているのでしょうか?
ここでは都道府県名の由来についていくつかのパターンに分類し、それらの特徴について見ていきます。
目次
なお、都道府県の成り立ちと変遷については次のページをご覧ください。
都道府県名の分類
都道府県名の由来にはどれだけのパターンがあるのでしょうか?
都道府県名を由来で分類すると、次のパターンに分けられます。
(パターンA)都市名由来
一番多いのは都市名に由来するものです。
- (パターンA-1)都府県庁所在地の都市名由来
オーソドックスに都府県庁所在地の地名を県名に採用するパターンです。この例は一番多く、27都府県を数えます。
青森、秋田、山形、福島、千葉、東京、新潟、富山、福井、長野、岐阜、静岡、京都、大阪、奈良、和歌山、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島
なお、大分と宮崎もこのパターンに当てはまるのではないかと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、この2つは経緯が異なるため、当てはまりません。詳しくは後ほど説明します。
- (パターンA-2)県庁所在地以外の都市名由来
変則的なパターンとして、県庁所在地以外の都市名を県名に採用している県があります。具体的には栃木県で、
従って現在の基準から見ると県庁所在地由来ではありませんが、歴史的経緯から広い意味での県庁所在地の都市名由来の県名と見なせます。
(パターンB)郡名由来
次に多いのは郡名に由来するものです。
- (パターンB-1)県庁所在地の郡名由来
県庁所在地のかつての郡名を県名に採用するパターンで、12県あります。
岩手、宮城、茨城、群馬、石川、山梨、愛知、滋賀、島根、香川、大分、宮崎
ここで、県庁所在地の都市名と同名の県名を持つ大分、宮崎が出てきます。それは、これらの2県の成立時には大分または宮崎という都市は存在しなかったため、郡名由来に分類されます。
大分県は明治4年(1871年)の成立ですが、当時県庁が置かれた地は
宮崎県は1873年(明治6年)の成立です(その後一時鹿児島県に併合された時期があります)が、当時県庁が置かれた地は宮崎郡上別府村で、町名として宮崎と呼ばれるようになったのは1889年(明治22年)まで下ります。
なお、パターンA-1に分類される県庁所在地の都市名由来の県名でも、都市名が郡名に由来する都市があります。具体的には次の4県です。
秋田、千葉、佐賀、鹿児島
これらももとをたどるとこのパターンに当てはまるとも言えるでしょう。
- (パターンB-2)県庁所在地以外の郡名由来
こちらも変則的なパターンとして、県庁所在地以外の郡名を採用している県があります。埼玉県と三重県の2県です。
埼玉県は明治4年(1871年)に
三重県について、県域には明治4年(1871年)の廃藩置県後に
従ってこれらも現在の基準から見ると県庁所在地の郡名ではありませんが、歴史的経緯から広い意味でも県庁所在地の郡名由来の県名と見なせます。
(パターンC)開港予定港湾名由来
廃藩置県が行われ府県が置かれた明治時代初期に重要視された都市としては、三都(東京、京都、大阪)の次が幕末の
このうち新潟と長崎については、港湾名が都市名と同一であるため、パターンAに含まれます。
神奈川と兵庫については県名と港湾名が一致していません。この2港については諸事情で実際の開港地が横浜および神戸に変更となり、県庁も横浜および神戸に置かれました。ただし条約の条文に明記された開港地は神奈川および兵庫であったため、そのままでは条約違反とみなされる可能性がありました。そのため当時の江戸幕府はそれぞれ開港地名の神奈川および兵庫の地名を冠する奉行を置いて、横浜および神戸は神奈川または兵庫の一部だと主張し諸外国の追及をかわしました。明治新政府も幕府の方針を引き継ぎ、それぞれ神奈川および兵庫を県名とした県を置きました。
これらの経緯から、神奈川および兵庫の2県の県名は条約に明記された開港「予定」港湾名に由来するものとなります。
(パターンD)その他
ここまでの3つのパターンに当てはまらない3道県については、それぞれ個別の由来があります。
- 北海道
北海道は明治2年(1869年)にそれまで
ただし明治初期の北海道は現在の北海道(北海道島と周辺
- 愛媛県
愛媛は「
伊予国では愛媛県成立以前から県名に既存の地名を使わない方針がありました。愛媛県は1873年(明治6年)に
- 沖縄県
沖縄は、もとは現在の沖縄本島を指す地名でした。1879年(明治12年)の
消滅した府県名
廃藩置県から現在の47都道府県が確定するまでは幾多の府県の統廃合が行われました。その中で現在に残らなかった府県名もあります。これら現在では消滅してしまった府県名もおおむね先に挙げたいずれかのパターンにあてはまるものがほとんどです。
都道府県名に見られる特徴
拡大・縮小する地名
こうして見てくると、都道府県名にはある共通点があるのにお気づきでしょうか?
それは、ほとんどが都道府県の領域と同じ地名を採用していないことです。
さらに具体的にいうと、北海道と愛媛を除く45都府県は都市名や郡名など都府県の領域よりも狭い範囲の地名を採用しています。逆にいうと、狭い範囲の地名が都府県名に採用されることで範囲が広がったといえます。
なお、北海道はすでに説明したように現在の北海道の領域よりも広い範囲の地名でしたが、道名に採用されたことにより範囲が狭くなった唯一の例です。また愛媛もすでに説明したように地名に由来する県名ではないため、例外中の例外となります。
府県名を採用した背景
現在の都道府県領域に近い地名としては当時国名(旧国名、
一方で府県の多くは近世の藩(金沢藩、仙台藩など)や奉行所(
こうして府県が成立した経緯を踏まえて府県名の由来を見てみると、都市などの地名が採用されるのはごく自然の流れであったと言えます。
まとめ
ここでは都道府県名の由来についていくつかのパターンに分類し、それらの特徴について見ていきました。
都道府県名の多くは都市名や郡名に由来する地名を由来としています。それらは都道府県の領域より狭い範囲の地名であるという共通点がありますが、その成り立ちから見てみると自然な命名であったことがわかりました。
あなたが住む都道府県はどのパターンにあてはまるでしょうか?
参考・ソース
参考文献
- 齊藤忠光 『地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち』 平凡社、2020年
(https://www.heibonsha.co.jp/book/b498585.html) - 国史大辞典編集委員会編 『国史大辞典』 吉川弘文館、1979/1997年
- 『日本歴史地名大系』 平凡社、1979/2003年
- 角川日本地名大辞典編纂委員会編 『新版 角川日本地名大辞典』 角川学芸出版、2011年